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マチの、映画と日々のよしなしごと

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韓国映画「許されざるもの」

先日WOWOWでユン・ジョンビン監督の「群盗」(2014年)を観て、ラストシーンなどは韓国版西部劇!って思える爽快さで、例えばロバート・アルドリッチ監督の「北国の帝王」とか、サム・ペキンパー監督の「ワイルドバンチ」に通じる味わい、はたまたタランティーノ作品に通じるエンタテイメント性ありだし、前作の「悪いやつら」(2011年)は、例えばスコセッシ監督の「ミーン・ストリート」や「グッドフェローズ」にも通じるような面白さありで、一作一作確実に進化成熟しているユン・ジョンビン監督。

となれば、
以前から気になっていて、絶対に見なくっちゃって思っていた本作、彼が中央大学校映画科4年の卒業作品として2005年に制作した本作「許されざるもの」を見る。


1979年生まれ現在37歳のユン・ジョンビン監督20代半ばの作品。
釜山国際映画祭で観客賞など4冠に輝き、2005年カンヌ国際映画祭 ある視点部門出品、2006年米国サンダンス映画祭出品、2006年ドイツ・ベルリン映画祭出品となれば、これは快挙でしょう。
スティーブンン・ソダーバーグは「セックスと嘘とビデオテープ」で史上最年少26歳でパルムドール受賞し、ジム・ジャームッシュ「パーマネント・バケーション」は彼の卒業制作作品、スピルバーグが最高傑作「激突」を撮ったのも20代半ば。
他にも他にもいるだろけれど、とり急ぎ思いつくまま上げてみたけれど、みんなみんな20代半ばで、おっ!という作品を撮っているし、以降の活躍も言わずとも、でしょう。
ユン・ジョンビン監督も間違いなく韓国映画界を引っ張っていく存在の一人といえるんじゃないかな。



<加筆修正>
大概の韓国人男性が経験する19歳~29歳の間の約2年間の兵役義務。
そこに放りこまれた若者たちを通して炙り出される組織というヒエラルキーが見せる不条理。
そんな見えない力に翻弄される彼らの姿、描きだされる人間模様は社会の縮図。
そんなメッセージを強く感じる「許されざるもの」。
ユン・ジョンビン監督の視点は、そこで蠢く男たちを通し韓国社会に鋭く切り込んでいる。

キューブリックの「フルメタル・ジャケット」やサム・メンデスの「ジャーヘッド」で描かれているような、実際に戦場に送り込む戦闘兵士をつくり上げる強烈な軍隊生活とは違う切り口で、案外と淡々と描かれているものの、彼らの言動を通して、20代の2年間の兵役義務というものが、肉体的にはもちろんだけれど、精神的にどれほどの苛酷さを強いるものかということがじわじわと伝わってくる。
学歴も職業も年齢も関係なく、入隊順に上下関係の序列が決まり、理不尽であろうがなかろうが絶対服従の掟。
除隊後、彼らの内面では、どれほどのものを引きずっているのだろうか。


負の構図として兵役義務や軍隊での生活を描いた作品って、韓国映画にあったのだろうか。
ユン・ジョンビンは自主制作映画である本作でタブーに切り込んだ?
韓国映画界の新しい潮流だろう。


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「悪いやつら」公開に先立ってユン監督が韓国社会に言及したインタビュー記事が興味深い。
「ビースティー・ボーイズ」以降、4年振りに再びカメラの後ろに立ったユン・ジョンビン監督は「韓国版ノワール”のこの映画について「香港とアメリカとは違い、韓国はギャングのリアリティーがないです。香港も三合会があり、アメリカにもマフィアという歴史が実際に存在しますが、韓国は偽物じゃないですか。存在しない過程で『こういう奴らがいた』と言えないでしょう。以前韓国で『ゴッド・ファーザー』を作ったら、ギャングの素材としてはだめだ、財閥の風習もしくは、王位逆襲ほどでなければその程度のオーラが出ないと考えたことがありました。つまり、韓国式は卑劣でみすぼらしく凄絶だということです」と語った。

その卑劣でみすぼらしく凄絶だという韓国の男たちの話は、全ての組織の“兄貴文化”に帰結する。軍隊、会社、そしてやくざの集団でも“ロジック”のような兄貴文化。社長に従い列をなして付いて行く風景は、やくざたちとあまり差がない。

「みんな似ています。ただ、どういう風にラッピングするかが違うだけです」
~「悪いやつら」ユン・ジョンビン監督 ― “韓国男性は兄貴文化だ”MYDAILY |2012年02月08日11時09分


ユン監督が語る兄貴文化としての韓国社会。
そして彼が切り込み抉り出そうとする世界に不可欠な役者がハ・ジョンウだろう。

一歳年上で大学も先輩後輩の兄貴的存在ともいえるハ・ジョンウ。
監督自身も同じ町内に住んでいて、一週間に3回以上お酒を飲んでは、映画の話や人生についてあれこれ話を交わせる友人であり、兄であり、良い仲間だと語っている。

ユン監督作品に登場するそれぞれのハ・ジョンウを見れば、彼がユン作品のどれほどのキーパーソンかって分かるだろう。


「許されざるもの」
ハジョンウもまだ20代半ば。若い!↓
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左側が少しとろい新参兵ジフン役を演じたユン監督↓ この方のどこからあんなノワール色の強い作品が生み出されたんだろうって思う風貌。
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余談だけど温泉マークってかつて日本で使われていて、ウィキペディアによると「明治時代から公衆浴場や旅館、赤線などの施設を示す記号として使用されていた。隠語としてさかさくらげとも呼ばれ、連れ込み旅館やラブホテルを意味する。」とあるけれど韓国でも同じかしらね。
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ホストクラブを舞台にした「ビスティ・ボーイズ」
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そして「悪いやつら」のハ・ジョンウ
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そして「群盗」のハ・ジョンウ
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ユン・ジョンピン監督。
次にどんな世界を描き出すのか、
眼が話せない監督でしょう。

かつて昭和の時代、日本映画でも確かにこんな風にギラギラするような熱い映画があったんだけど
今、韓国映画を見ていてそんなことを思う。
やはり映画は社会を映し出す鏡なんだろう。
ともかくも、映画を見て、やはり熱くなりたいと思う。


マチ。





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by machiiihi | 2016-08-08 13:41 | 映画

映画「雪の轍」

第67回(2014年)カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。
最近は、どうかするとカンヌ映画祭受賞作に対して、面白そう感とめんどくさい作品ねぇって感とがシーソーして、めんどくさい感がやや重い傾向に私的にはある。

3時間の長尺を感じさせない手腕はさすがだけど、

う~ん、やっぱり、私的には面倒くさい作品。
それぞれが自己主張し、自分の思い込みで相手を判断し、噛み合わないものに互いに苛立ちながら噛み合わそうと言葉で説明するけれど、互いに己の立ち位置から一歩も動かない不毛な会話は単なる言葉の押収に終始し、ますます袋小路に……
ちょっと前なら、これはこれで面白さも感じたのだろうけれど、

10年前、いや、5年前ごろまでだったら、面白いほうが勝っていたんだろうなって思う。
これもお年頃でしょうかしら。
生きることの重さは、あえて言わずとも胸の奥に静かに静かに持っていましょうと思う。
映画もまた然り…でしょうか。

もう、いいわ。
ってところかな。

公開初日だった土曜日は、偶々でしょうか。
若い人よりも、私と同世代か、もう少しご年配の方たちのほうが若い人たちよりも多かった。
数人で観に来られている女性客も、服装から判断するに私よりもどうみても年長みたい。
皆さん、気持ち逞しいなって思う。
といいながらも、そんな私も、めんどくさそうと思いながらも、性懲りも無くまた劇場に足を運ぶかも。


世界遺産トルコのカッパドキアの小さなホテルが主な舞台(これも客寄せの一つ?)。
登場人物たちのざらついた内面と重なるような、石窟を思わせるホテル。
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監督は、トルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督。
56歳。
2002年『冬の街』と2011年『昔々、アナトリアで』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞。
2008年『スリー・モンキーズ』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞。
2014年には5度目の出品となった本作で第67回パルム・ドールを受賞。
56歳。
まだまだ活躍が期待される年齢。
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トルコというと、
セミフ・カプランオール監督の「卵」「ミルク」「蜂蜜」の三部作も面白かった。
お気に入りだったのはトルコ系ドイツ人のファティ・アーキン監督。
太陽に恋して」(2000年)
「愛より強く」(2004年)
そして、私たちは愛に帰る」 (2007年)
「ソウル・キッチン」 (2009年)


日曜日にガラリと変わり、ど派手すぎる「アベンジャーズ」を観に行こうか、
それとも京都市美術館まで出かけようか、
その前に、はがき貰ってたブティックに久方ぶりに顔を出そうか、
とあれこれ思っていたけど、ギラギラムンムンの外気に、外に出るという気持ちそのものが完全に萎えて、家に引きこもっていた。


暑いより熱いって字がぴったりなこの頃。


マチ。
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by machiiihi | 2015-07-12 18:00 | 映画

映画「ラッシュ/プライドと友情」

いやぁ、ここに来て映画花盛りで嬉しい!
先日は、スコセッシ×ディカプリオのコンビが一気に開花したとも言いたいほどの「ウルフ・オブ・ウォールストリート」を魅せてくれたかと思っていたら、今度は、ロン・ハワード監督。
彼の今までの作品で一番熱い作品、渾身の一作と言いたいほどの本作「ラッシュ/プライドと友情」に、観る方も熱き思いで心が満たされました。

大阪人っていい映画でも本編終るやエンドロール途中でも席をたつ輩がいるんだけど、本作は誰一人出て行かなかったわ。

★★★★★
RUSH
2013年/アメリカ/124分/PG12
監督: ロン・ハワード
製作: アンドリュー・イートン
脚本: ピーター・モーガン
撮影: アンソニー・ドッド・マントル
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いやぁ、ロン・ハワード監督って彼の作品を観るたびに、そして本作は特に強く思ったんだけど、(失礼な表現だけど)あの貧相としか言いようがない彼の内のどこから、このダイナミックで、それでいて人の心の機微を丁寧に描いたドラマが生み出されるのかしら。

1976年のF1世界選手権におけるジェームズ・ハントとニキ・ラウダを中心に、異なる生き方の二人の男を描いた本作。

レースシーンなんて、本当のレースを見ているみたいな迫力と臨場感、緊迫感に圧倒された撮影監督アンソニー・ドッド・マントルのカメラワーク!
そして、そのレースの中でもニキ・ラウダとジェームス・ハントの熱く静かに燃える闘争心、そしてライバル意識剥き出しの、宿敵ともいえる二人だからこその通じ合う熱きものまでもが見事に描き出され、全く正反対とも言える二人の天才ドライバー、ニキ・ラウダとジェームズ・ハントそれぞれの生き方もじっくりと描き出され、その後の彼らにも納得させられる。


この映画のポスターが劇場に張り出された当初は、「プライドと友情」っていうクサい邦題にトーンダウンしたし、主演の二人にはそそられるものがないしなぁ。
クリス・ヘムズワースは「マイティ・ソー」のマッチョなソーには魅力感じないし……、
は「グッバイ、レーニン!」や「ベルリン、僕らの革命」の頃は良かったけど、だんだん濃くなってきて苦手係数に傾いていたし……
でも、ロン・ハワード監督だったらべたなヒューマンドラマには仕上げてないだろうな、いや、案外とオーソドックスにベタベタかもって、観る?観ない?で揺れ動いていた。


だったけど、

いやぁ、主演の二人良かった。
死と隣りあわせともいえるF1レースのあのスピードにプライドを駆け、死と隣り合わせだからこそ、その瞬間に生を感じるジェームズ・ハントと、どこまでも完璧さを追求するニキ・ラウダ。
好対照ともいえるハントとニキを演じた二人。
とりわけ、エキサイティングに人生を生きる根っからの破天荒なプレイボーイともいえるジェームズ・ハントを演じたクリス・ヘムズワースがとっても清清しくって好演。だからこそハントの繊細で孤独な一面も逃さず捉えたシーンには胸にちくっと痛い。
本作はクリス・へムズワースにとって役者として大きなステップアップになったんじゃないかな。

ニキを演じたダニエル・ブリュールは、今も健在なニキ・ラウダを演じるプレッシャーは大きかっただろう。でも、ニキ・ラウダ本人がラストでハントについて語るシーンがあって、当時のニキから現在のニキに移行しても違和感を覚えなかった。
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F1に興味なくっても、ハントもニキを知らなくっても、スピードを追求しながらも全く異なる生き方を求めた二人の男の生き様を描いた「ラッシュ/プライドと友情」は、2時間とも思えないほどの濃さのある映画。
それでいてとっても清清しく、でもラストでニキ・ラウダの言葉を聞きながら鼻の奥がつんとした。
絶対におすすめ!の正統派の映画。

★★★★★

余談になるけど本作って今年の米アカデミーとはご縁が無いのね。
ニキ・ラウダはドイツ人でジェームズ・ハントはイギリス人。ニキの所属チームであるフェラーリはイタリアだし、ハントの所属チームのマクラーレンはイギリスだし…アメリカ出て来ないから?(笑)


Machi。
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by machiiihi | 2014-02-10 10:35 | 映画

映画「夢売るふたり」

「ゆれる」では、家長制度の因習に閉じ込められた兄と、家も郷里を捨てたように自由に生きる弟の、この兄弟の、兄弟だからこその確執と、兄弟だからこその切れない繋がりと、そんな兄と弟の中の心の底にゆらゆらとゆれる澱のような得体の知れないものが横たわっていることの、どうしようもならない哀しさが映像からたちこめ、、そしてラストでみせた香川照之の表情にこの映画の全てを物語っているような、あの表情が観るものの胸に焼きついた映画だった。
兄の中で蓄積し続けてきた弟に対すし、ぶすぶすとくすぶり続ける確執が怨念すら感じさせるような香川照之の演技が圧倒的だった。
 「ゆれる」の映画レビューはこちらのブログを 

そして本作「夢売るふたり」で、松たかこがラストで見せたあの表情が、里子、そして里子と貫也のその後を、映像の向うに思い描いてしまう。
松たか子…だんだんいい女優になっていってるナァ。
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女性である監督西川美和子が、女しかもその女は、焼失した自分たちの店をもう一度持つという、自分たちの夢をかなえるために、夫をそそのかして、結婚詐欺で女達から金を巻き上げようとする女を描いた本作。同じ女だからわかる、女の持つ現実性、逞しさ、意地、残酷さ、母性本能、すがりつきたい弱さ……。

女の本性といえば大袈裟だけど、松たか子を通して映像に引きずり出したともいえる本作。


夫の貫也が板前として腕を振るい、妻の里子が明るい笑顔と気配り目配りで店を仕切る。カウンターをはさみアイコンタクトで互いに通じあう里子と貫也の最強の二人三脚。
二人で一つだった、いつもそれが当たり前だった里子と貫也。

二人で励ましあって苦労しあってやっと念願の小料理屋を開き、常連客で賑わう店を二人で築き上げて5年。
その幸福が、二人の夢が、目の前であっけなく焼け落ちてしまった。
意気消沈する貫也とそれを励ます里子。
二人の関係は、里子が貫也の妻であり、そして母であり、貫也はそんな里子に頼り、従順に甘えてきた。そんな関係だったんだろう。
だから新しい店の構想も、女達から巻き上げた資金ではまだ不足だけれど、貫也の希望を叶えてあげたかったのだろ、貫也を励まして結婚詐欺に精を出す里子。
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結婚詐欺も最強のタッグでやっていたはずの二人が、どこからすれ違っていったんだろう。
女たちにささやかな夢を売るのと引き換えに、二人の中でキラキラと輝いていた幸福や笑顔が乾涸びていった。


店の常連客だった玲子が、不倫相手の弾性からの手切れ金を店をなくし失意の貫也にくれた。
女が惨めな気持ちで受け取った金を、惨めな二人が受け取った。
その札束を凝視しながらガスコンロで燃やし、火のついた札束を貫也に叩きつけた里子。
「里ちゃんは女たちに復讐したいだけなんだ!」そう詰る貫也の言葉をコップの水と一緒に飲み下す里子。


係わった女たちの人生、彼女達が胸に抱えている哀しい部分、一生懸命さに触れる度に貫也のなかで何かが少しずつ変りはじめたのだろう。
女の夢を金に換算する里子。
貫也がいない部屋で空しく自慰行為に耽る里子。


貫也の幸福は、自分が作った料理を美味しいといって食べてくれる人の笑顔。
その貫也の喜びが自分の喜びだった里子の幸福だったあの頃。
二人で一つの笑顔だったあの頃。


その貫也が離れていく。
彼が偶然に出会った一組の母子。
親切心で作った自分の料理を美味しいと笑顔で食べてくれる食卓の温もり。
料理を作ってあげるだけだから……
公務員だから金には困ってないと思うから……
もうすこししたら金を取れると思うから……
店が開くまでには帰ってこれるから……

そういって庖丁を包んでその親子の家に向かう貫也。
その腕をつかむ里子。
「行かないで」そういって縋りつくことができたら……
自分の中にある弱さや不安を彼にぶつけることができたら……
それができない、自分で背負い込んでしまおうとする里子の強さ。
里子には出来ないんだよね。
貫ちゃんのこと、誰よりも一番よく知っているから、だから弱い部分を見せられないんだよね。
これ以上惨めになりたくないと思う里子の意地もあったんだろうね。
だから、その腕を放してしまったんだよね。

里ちゃんが後を追ってきてくれたら……後ろを振り返った貫也。
引き止めて欲しいと思った貫也。
引き止めたいと思った里子が飛び出したのは、彼が自転車で走り去った後。
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貫ちゃんはもう帰ってこないんだ。
私から離れていったんだ。
横断歩道に立ち尽くす里子の目の前に、二人が結婚詐欺を働くきっかけとなった手切れ金の玲子が、キャリアウーマンとして颯爽としたスーツ姿で歩いていく。里子に気がつき笑顔を見せる玲子。

そんな玲子の元に、二人の店だった「いちざわ」のゴム印を押した封筒で現金が届く。
どうやって工面したのか、里子の女の意地だろう。
貫也が係わった女たちはそれぞれに新たな一歩を踏み出し自分の人生を歩き始めている。

里子は東京を離れ青森の大間漁港で働いている。
頭の上でカモメが甲高く鳴いている。
刑務所に服役している貫也の耳にカモメの鳴き声が聞こえたような、そんな遠くをみつめる目で空をあおぐ。
ここにいない里子を思い出しているような……。
そして里子は……
スクリーンを観ている観客を見つめるようにじっと前をみる里子。
働いて生きていくしかないでしょう。
貫ちゃんが出てくるまでここで頑張る。
夫婦だから……
このラストシーンの受けとめ方は、もう一度映像で確かめたいなって思う。

夢を見ていたのは女たちだけではなくって、里子と貫也の方だったのかも知れない。
人間って、外からどんと押してもらうか、何かの衝撃がなければ、袋小路から抜け出せないのかもしれない。
里子や貫也、それから二人がかかわった女たちをみていて、そんなことをふと思うと、ポール・トーマス・アンダーソン監督の群像映画「マグノリア」で、空からカエルの雨が降ってきて、その衝撃で躊躇っていたものたちが次の一歩を踏み出す、あのらすとシーンを思い出す(のって変かな?)。


妻・里子に松とも子、そして夫・貫也に阿部サダヲというこのキャスティング。
そして阿部サダヲが結婚詐欺師?というあり得んと思える設定。

兄弟の確執を描いた「ゆれる」に比べて、本作は切れ味は少し鈍いかなとは思うところもあるけれど、さらに女たちに迫って欲しいと思う。
向田邦子の、あの温かくも鋭い視線と切れ味が欲しいナァと思うのは、ちょっと酷かな。
向田邦子が生きた時代のほうがもっともっと飢餓感が強かったのかな。
そして彼女自身も強烈に生きるということ、女であるということに飢えていたんだろうなぁ。


マチ。
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by machiiihi | 2013-10-20 00:00 | 映画