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マチの、映画と日々のよしなしごと

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映画「ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ」

この作品、すっごく濃密で刺激的!
ダイアナ・ヴリーランドの彼女の生き方そのものがファッションであり、彼女の哲学。そんな彼女の感性がビシビシ伝わってきて、映像を観ている私にも彼女のオーラが浴びせられ、ドキドキ・ワクワクさせられ、とっても大きな勇気と自信を与えてくれる、そんな作品。
これは大袈裟ではなくって、私の宝物にしたい、そんな大切な映像だわ。

ダイアナが「地獄の庭」と呼ぶ真っ赤な部屋で自伝出版のために受けたインタビューをもとに、
貴重なアーカイブ映像や、彼女と交流のあった(いわゆる)セレブリティやそして親族のインタビューで語られるダイアナ・ヴリーランド。

原題:Diana Vreeland: The Eye Has to Travel
2011年/アメリカ/86分
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Diana Vreeland(1903年7月29日-1989年8月22日)
「ハーパース・バザー」のカリスマ・エディターとして1937年から25年間に亘って革新的な誌面を創り続け、1962年にライバル誌である「ヴォーグ」の編集長に就任。
以降、彼女のアシスタントであったグレース・ミラベラに代わる1971年まで編集長を務めた。
ちなみに、「プラダを着た悪魔」のモデルは、ミラベラの次の編集長になったアナ・ウィンター
晩年、メトロポリタン美術館衣装研究所の顧問に就任。いくつもの衝撃的な衣装展を成功させた。


   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

本作は2012年末から2013年はじめにかけて公開された映画だけど、私はその時はゆっくり映画館へ行く状況ではなくって、WOWOWの10月の特集「映画で観るファッション業界の裏側」で放映されたドキュメンタリー4作品の一つ。
録画しても観る時間がないので10月ではスルーしたけど、会社近くのお気に入りの喫茶店のウェイター君(彼とは、コーヒー飲みながら時間があれば、好みの感覚が合うから映画のおしゃべりをする。)が、4つとも面白かったですよって教えてくれての鑑賞。

■「カール・ラガーフェルド スケッチで語る人生」(Karl Lagerfeld se dessine/2012年/フランス/50分)
■「VOGUE ファッション誌、モードへの昇華」(In Vogue: The Editor's Eye/2012年/アメリカ/60分)
■「ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ」(Diana Vreeland: The Eye Has to Travel/2011年/アメリカ/86分)
■「ヴィダル・サスーン」(Vidal Sassoon: The Movie/2010年/アメリカ/94分)





この作品観て、すっごく興奮してしまって、何をどう書けばいいのかしらって、書きたいことが一杯あって、頭の中でぐるぐる回って、取り留めなく書いてしまったけど、やっぱり、まだまだ書き足りないなぁ。

中学、高校時代、下校途中の書店でファッション雑誌「ヴォーグ」と映画雑誌「スクリーン」をいっつも立ち読みしてたっけ。
背伸びして覗いていたヴォーグの世界。
その頃は分からなかったけれど、今にして思えばアートを感じさせてくれる世界だったんだ。そして、ヴォーグのモデルたちが好きだった。
今でいえばハンサムウーマンな彼女たち。
モデルといえば、にこやかに微笑んで美しいお人形みたいと思っていたけど、ヴォーグの彼女たちは、笑顔なんか見せず、カキッとした表情で真っ直ぐ前を見詰めている。そんな彼女たちの、自己主張するような、媚びないスタイルが好きだった。
私が読んでいたのはダイアナ・ヴリーランドが編集長だった頃のヴォーグだったのね。


そして彼女がヴォーグの編集長だった1960年代は、第二次大戦を経て、時代の価値観が大きく変るエポックでもあった時代。
映画界ではフランス・ヌーヴェルヴァーグに代表される新しい波が起こり、音楽界ではロックがさらに開花し、ビートルズ旋風が巻き起こり、ファッション界ではイギリスのマリー・クワントがミニスカートを発表、あっというまに今までの女性の服装の価値観を覆した。そして今までは労働服でしかなかったジーンズが若者を中心に市民権を得、デニムがファッションの重要な素材にまでなった。そしてウッドストック、そしてヒッピー……今では当たり前になっているもの全てが、マグマの如く60年代という時代に一気に噴出したといってもいいんじゃないかな。


そんな時代の中で、今や当たり前みたいになっているけど、ファッションをアートにまで高め、ファッションを狭い檻から解放させたのがダイアナ・ヴリーランド。
そういっても決して誇張でもないなって、この映画を観ていてつくづく思う。


「ブルージーンズはベニスのゴンドラ以来の最高傑作よ」
ダイアナは興奮して語る。
子供時代を、ベルエポックと呼ばれるあの優雅で贅沢な時代の空気に包まれて育ち、そして何物にも囚われない自由な発想でファッションを生き方のレベルにまで高めたダイアナ・ヴリーランド。
それは、古き良き時代の良質なる品性を精神の土壌に、本当に美しいもの、価値のあるものを知っているからこその彼女の感性。

「スタイルこそすべて。まさに生き方。スタイルなしじゃ何も語れない。」
「日本人は凄いわ。神は彼らにダイヤも石油も金も与えなかった。でもスタイルを与えたわ。」
着物を着たらシナをつくるのよ。そういって彼女は、日本の芸者の所作、発声、表情、話し方をもっともっと見習うべきだわって言っていたそうだ。
「新しい服を着るだけではダメ。その服でいかに生きるかなの。」
彼女の生き方そのものが彼女のファッション哲学。

ニジンスキーの踊りを目の前で見て、「舞台の端から端に行くんだけど、彼は凄いのよ!」
彼女にとって「凄いのよ!」 の一言で十分。そして「凄いのよ!」の言葉の内側にぎゅっと詰まっている熱いものをファッション雑誌という媒体を通して彼女は表現する。
そんなダイアナ・ヴリーランド語録ともいえる言葉、彼女の感性そのものが彼女の口からバンバン語られる。

刺激的だった60年代と刺激的な彼女の生き方が見事に重なる。

そんな映像をみていると、10代の頃に眺めていたヴォーグが、ファッションのファの字も知らなかった頃だけど、私の感覚の物差しの中心には確実にヴォーグがあったなって思う。

彼女とは違って、穏やかで真面目な紳士といった雰囲気の彼女の二人の息子。
「学校ではビリかトップのどちらかになりなさい。中途半端はダメよ」って言われていたそうだ。子供にはきついことだよと、普通の母親が欲しかったよと、二人して苦笑しながら母ダイアナを語るのも可笑しい。

そんなダイアナだけど、20歳の時に、彼女が一目ぼれして、そして結婚したエール大卒で25歳年上の銀行家である夫トーマス・リード・ヴリーランドに対しては、何年たっても彼の前でははにかんでしまうのよと語る。
インタビュアーが「本当に?」って聞き返すと、
男性の前で「はにかむ」ことはとても大事よと、とっても真面目な顔で答えるダイアナ。

女も野性的であるべきよと、既存の女の価値観を蹴飛ばし、でも女であることを堂々と主張し、欠点を生かすべきよと、モデルのマイナス面を個性的な魅力にまで高め、ポジティブというよりも攻撃的にファッションを提案し続ける。

映像を通してもなお強烈に放たれる彼女のオーラが、観ている私に勇気と自信を与えてくれるような、そんな気持ちにさせられる本作。
やっぱりダイアナ・ヴリーランド。
この作品は私にとっては宝物みたいな大事な映像だわ。
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Machi。
by machiiihi | 2013-11-30 10:00 | 映画
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