人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

マチの、映画と日々のよしなしごと

machiiihi.exblog.jp

映画「グランド・ブタペスト・ホテル」

1942年2月、
シュテファン・ツヴァイクは新しい亡命地ブラジルのペトロポリスで自殺した。
「別れの手紙」には、自分たちの世界がもはや消え失せたからには、その世界に「節操をつくし、一つの生命に終わりをもたらす」旨のことが記されていた。
~「チェスの話 ツヴァイク短篇選」池内紀解説より~


…………………………………………………………………………………………………………………………………

ウェス・アンダーソン監督の「グランド・ブタペスト・ホテル」(2013)
これってレビューアップしてなかったんだ!
遅ればせながら。

もうWOWOWなんかでも放映されていて ブルーレイなども発売されているけれど、スクリーンでないと本作の味は充分には伝わりきらないだろうな。


これは思わずパンフレットを買った作品。
戦争という狂気が時代から色を奪っていく。
ボンボンシュガーみたいなこんな素敵な世界から無慈悲にも……。

そしてこんな表紙を見たら、買わずにはいられない。
それから、顔ぶれみると思わず口笛吹いてしまいそうなほど嬉しくなってしまう俳優陣。
映画「グランド・ブタペスト・ホテル」_b0309033_11443246.jpg


結構、個性的ともいえるウェス・アンダーソン作品。
半テンポずらした彼のツボ。
好きな人は堪らん味なんだろうけど、人によっては、それがどうした?どこが面白い?って風な印象ももたれるかも……の監督。
でも本作は、このボンボンシュガーみたいな世界で、かなり受容領域は広がったのではないでしょか。


そして、エンドロールの最後の言葉
「この映画は、シュテファン・ツヴァイクの著作と生涯にインスパイアされた」

ツヴァイクって誰?
でウィキペディアを覘いてみた。

ユダヤ系ドイツ人であったシュテファン・ツヴァイク。
1942年2月22日、ヨーロッパとその文化の未来に絶望して、ブラジルのペトロポリスで、1939年に再婚した二番目の妻であるロッテとともに、バルビツール製剤の過量摂取によって自殺した。死の一週間前には、旧日本軍によるシンガポール陥落の報に接し(シンガポールの戦い)、同時期にリオデジャネイロのカーニバルを見ており、自分達のいる所とヨーロッパとアジアで行なわれている現実のギャップに耐え切れず、ますます悲観したようである。
遺著となった『昨日の世界』は、自身の回想録で、著者が失われたものと考えたヨーロッパ文明への賛歌でもあり、今日でも20世紀の証言としても読まれている。(ウィキペディアより)


ツヴァイク氏
映画に登場するレイフ・ファインズ演じる伝説のコンシェルジュ”グスタヴ・H”と似ている。というより彼がモデルなんでしょう。
映画「グランド・ブタペスト・ホテル」_b0309033_13212086.png


作品とツヴァイク氏とを重ね合わせると物語に込められたアンダーソン監督のメッセージ、物語が語るものが見えてくる。グランド・ブタペスト・ホテルは平和主義者ツヴァイクの桃源郷でもあったんでしょうね。

映画「グランド・ブタペスト・ホテル」_b0309033_1412826.jpg
映画「グランド・ブタペスト・ホテル」_b0309033_141998.jpg
映画「グランド・ブタペスト・ホテル」_b0309033_1358222.jpg
………………………………………………………………………………………………………………………………………

そして映画を見終わると同時に、ツヴァイクの「マリー・アントワネット」上・下巻を読んだ。
そうなんだ。映画レビューアップする前に、ツヴァイクに興味深々で彼の本を夢中になって読んでたんだ。
内容(「BOOK」データベースより)
女帝マリア・テレジアの愛娘にして、フランス宮廷に嫁いだ王妃マリー・アントワネット。国費を散財し悪女と罵られ、やがて革命までも呼び起こす。しかし彼女は本来、平凡な娘―平凡な人生を歩めば幸せに生きられたはずだった。贅沢、甘やかし、夫の不能…運命は様々に不幸という鞭をふるい、彼女を断頭台へと導いてゆく。歴史が生み出した悲劇の王妃の真実を、渾身の筆で描き出した伝記文学の金字塔。完全新訳、決定版。(アマゾン)

特に、時代が大きくうねる下巻は面白くって一気に読んだ。
膨大な資料から真偽を嗅ぎ分ける作業を土台に、ツヴァイクは目の前で繰り広げられるドラマを固唾を呑んで見続けるような面白さで時代と人を描いている。
マリー・アントワネットとフェルゼンに至っては、古典的ハーレクィンロマンスとでも言えるほど二人の切なさが伝わってくる。
池田理代子の「ベルサイユのばら」本作をたたき台にして描かれたとか。
ソフィア・コッポラの映画「マリー・アントワネット」も、ツヴァイクのマリー・アントワネット像を下敷きにしているんだろうなって思う個所が随所に描かれている。



Machi。
by machiiihi | 2015-04-02 01:00 | 映画
<< 今だけだから…… 4月になりました >>